ようこそ劇場へ
ようこそ劇場へ。
突然だが、これを読んでくれている人はこの曲を知っているだろうか。
ファンからの手紙を読んだり、化粧台のライトをつけてメイクしたりと、井上芳雄の本番30分前の様子をミュージカルのワンシーンにしている。
ようこそ劇場へ 魔法の国へ
ようこそ劇場へ 夢破れる国へ 涙と笑いの世界へ
ようこそ劇場へ きっと虜になるさ
これは「MANKAI STAGE『A3!』~SPRING & SUMMER 2018~」大千秋楽のライブビューイングを観劇した一介のオタクの感想文です。
原作オタクがエーステを観ると決心するまで
ゲームが大の苦手だった私が人生で初めてハマったのが、このA3!というゲームだった。人生で初めて課金したのもA3!だし、たぶんソシャゲ厨からしたら取るに足らない額しか課金してないけど、それでも大好きなキャラがいます。
瑠璃川幸くんって言うんですけど。
これまで実在の人間ばっかり推してきたオタクにとって、ここまで2次元で熱量をもって推しているキャラも初めて。
幸くんを演じている土岐隼一さんと幸くんの絶妙な距離感も好きで・・・可愛らしい女装姿、彼の華やかな外見や大人顔負けの裁縫スキルではなく、本当の魅力は彼の男らしさだって言うんですよ。エモい。
そんな大好きなゲームが舞台化して、初めて瑠璃川幸が土岐隼一の手を離れた。
ノラガミ、黒執事、刀ステ・・・2.5はこれまでにちょくちょく見てるんですけど、2次元コンテンツの舞台化にこれまで全く抵抗はなかった。初演は主要な役を人気の舞台俳優が務めることが多いし、どれも2.5だからってなめてかかれなくて、実際どの作品も素晴らしかった。どの舞台も、原作を何よりも尊重して出来てるのはわかっていた。
ただ、キャラが声優の手を離れて歩き、他の誰かに共有される。いわば「瑠璃川幸'(ダッシュ)」ができる。
この事実が初めて怖いと思ったし、正直春組ストーリーがやってた舞台の前半が終わる、本当にギリギリまで複雑な気持ちだった。これは100%自分が悪いけど、どうしてもこの事実を未だに受け止めきれずにいて、そんな自分に自分が一番困惑した。
「あっ私マジで瑠璃川幸というキャラクターが好きなんだな・・・」ってここにきて初めて気づいた。遅いわ恋かよ。
キャラが声優の手を離れ、演じる俳優が代わりにそのキャラクターの人生を生きる。
演じる俳優さんからしたら、自分はキャラクターの人生に途中参加した新参者であり、ファンと声優がこれまで構築・共有してきたものと向き合いつつ、なおかつ自分らしく創っていくのはとても大変で不安だと思う。
でも、観ているこちらも同じぐらい、自分がこれまで作り上げてきたキャラへの解釈と向こうの解釈がどこまで合致するか、すごく不安になる。
それが2.5次元という特殊な舞台の一番の不安要素でしょう。
ここまで考えて悩みに悩んだ結果、とうとう観る勇気を踏み出せないまま、この凱旋公演を迎えてしまったのである。
でも百聞は一見にしかずだと思って。観ることにした。
オタク、エーステ大千秋楽を観る
観ました。
YouTubeに上がっているゲネの映像の何百倍も良かった。
夏組1回公演の評論家みたいなことを言うけど、ゲネとはまるで別物の舞台だった。
幸くんを演じる宮崎湧さんは、とにかく声をすごい土岐さんに寄せてくれていて、土岐さん独特の言い回しや、彼特有の声の跳ね返りまで再現していた。あと当たり前だけどめちゃくちゃ顔が綺麗だった。
咲也くんはとにかく原作の懸命さ、目の真剣さ、へこたれない強さ、全力さみたいなものがそっくり。
真澄くんは白井さんが演じている時より良い意味でサイコさがなくて、代わりに息遣いと監督への心情に妙なリアルさがあった。
綴くんはツッコミの鋭さに磨きがかかっていて、苦労性って感じが顔に出てたし、語尾の抜け方が西山宏太朗だった。
至さんは浅沼さんの時より毒が少なくて、わりと柔らかくて人当たりが良く、まさしく素を出し切れず会社の同僚と同じ顔をしてしまう初期の至・・・という感じ。
シトロンはめっっっちゃシトロン。(すごい褒めてる)
三角は実物になってさらに不思議さと可愛さが増した。(あとアクロバットが本当にすごくてマジで1回見失った)
椋は天馬の演技に影響を受けて、後半になるに連れてどんどん演技の質が上がっていったのが印象的だった。内に秘めていた魅力がやっとそこで全て解放されたようで、そんなところも椋に似ていた。
一成はチャラさが増したことでより「3次元にいそうな大学生」になり、キャラに現実への説得力が出た。あと、どれだけ天馬の熱を受けてもキャラを忘れずに最後まで泣かなかったのが上手いな~と思いました。*1
そして終演後、方々から彼を称賛する声が聞こえてきた。
天馬役の陳内将さんである。
個人的にはそこまで陳内さんの演技に江口さんみを感じなかったが、それ以上に、天馬の持つ本質的な部分が忠実に再現されていた。
演技に妙な貫禄があり、それを自分でも1番の心の拠り所としていて、でもそればかりが拠り所となっているせいで、中身はいつ心が折れてもおかしくない、脆い思春期。
ドラマや映画と違って1回きりしかない舞台の、それも普通よりもかなりスピード感のある舞台で、かつ気持ちを持っていく時間がほとんどない状況で、彼はきちんとしかるべき所で綺麗に涙を流した。あまりにも本物すぎる。
皇天馬を、2.5次元舞台の単なる登場人物ではなく、A3!という世界を生きる、血の通った人間として見せてくれた。
目に見えて、皇天馬を演じる陳内将に影響されて、その公演だけでも舞台全体の質が上がり、他の演者の演技も相乗効果でどんどん良くなっていた。
二人で昨日マチソワ間に話してたの
ねー、じんちゃん
最初夏組がこんなチームになるって思ってた?んーん。
みんなストイックでさー、みんながみんなのこと思えるしさー、あんたのお陰よ。やっぱ何だかんだあんたについて来てたんだよ俺たちはさー。
つってどっか行くの。やめて、置いてかないで
一人で泣く。そんなん、泣くやん。
でも、心底嬉しかった。
この時間、オレが生きてきたこと認められた気がした。
普段は初演日となっていた劇中劇の演出も千秋楽に変わり、あの日の公演も集大成となる大千秋楽。その事実がキャストをあそこまで押し上げたのかもしれないが、そこまで押し上げるのに、間違いなく彼は一役買っていた。
赤澤さんの言う通りで、彼の熱量が夏組のキャストを、ひいてはエーステ全体の士気を、咲也役の横田さんと違う方向から高め、支えているような気がした。
そして、舞台をテーマにした舞台だからこその熱量が劇場いっぱいに広がり、エーステはまるでひとつの生き物のようにうごめいて、息を吐き、観客の心に咲いた。
キャラクターが声優の手を離れて歩き、他の誰かがそのキャラクターの人生を歩く。
キャストそれぞれが自分なりにキャラクターと向き合って寄り添おうとし、それが観客にも伝わった結果、不安が昇華される。
演じる側も観る側も、最終的に落ち着くところに落ち着くのは、過程は違えど、目指しているゴールが一緒だからなんだろうと今回の経験を経て感じた。
カントク!大千秋楽お疲れ様でした!
— MANKAI STAGE『A3!』 (@mankai_stage) November 4, 2018
これからもオレたちを咲かせてください!
オランジーナでKANPAI!!#エーステ#KANPAIオランジーナ#KANPAIフォトラリー#いつもと違うオランジーナあるって思った人#明後日発売の限定品だよ pic.twitter.com/gtyhJ4thUj
ようこそ劇場へ。きっと貴方も虜になるさ。*2